Network Working Group V. Cerf Request for Comments: 3271 Internet Society 分類: 情報提供 2002 年 4 月 インターネットはみんなのもの 本文書の位置づけ 本文書はインターネットコミュニティに情報を与えるものである. いかなる 種類のインターネット標準をも規定するものではない. 本文書の配布は 無制限である. 著作権表示 Copyright (C) The Internet Society (2002). All Rights Reserved. 要旨 本文書ではインターネット社会のイデオロジーである, インターネットは まさにみんなのためのものであるということについて述べる. しかし, 我々が努力しなければみんなのものにはならないのだ. 1. インターネットはみんなのもの 言うは易し, 行なうは難し! この崇高なゴールに向かってどのように前進してきたのか? インターネットは 1988 年以来14年間, 1年で倍に成長し続けている. インターネットには 1 億 5 千万以上ものホストがあり, 世界中で 5 億 1300 万人のユーザがいると推定される. 2006 年までに, 世界のインターネットは世界の電話ネットワークの規模を 超えるであろう. ただしそれは電話ネットワークが IP 電話を使用 したものになっていなければの話である. さらに, 伝統的なサーバ, デスクトップ, ラップトップに加えて, 15 億ものインターネット使用可能な 電化製品がインターネットファミリーの一部となるであろう. ポケット ベルや携帯電話や PDA も次の 10 年間のうちに新しいテレコムツールに なるべく融合するであろう. しかし, 電話システムにおいても, 世界のたった半分の人だけが電話をしたことがあると認識することによって 冷静にならざるを得ない. ネットワーク上のビジネスは 2003 年までに $1.8兆 から $3.2兆 の間になる であろうと予測されている. これは今からほんの 2 年後の話である (とは言うもののインターネットイヤーとしては長いキャリアである). Cerf Informational [Page 1] RFC 3271 The Internet is for Everyone April 2002 インターネットユーザの数は 2005 年の終わりには 10 億人以上になるで あろう. しかし, それは世界人口の約 16% に過ぎない. 2047 年までに 世界人口は 110 億人に達するであろう. もしそのときの世界人口の ほんの 25% がインターネット上にいたとしても, それはほぼ 30 億ユーザ にしかならない. DSL, ケーブルモデム, デジタル地上波/衛星ラジオリンクによる高帯域 アクセスが標準となるにつれて, インターネットで利用できるメディアの収束は 明白になる. テレビ, ラジオ, 電話, 伝統的な印刷メディアは, インターネット 上に似たものが登場し, 片方向メディアから, 多人数共有できるインタラクティブ 資源に変換するソフトウェアの存在によって大きく変わるであろう. インターネットはその創案以来, 最も強力なスピーチの増幅器として証明 されつつある. インターネットがなければ聞こえたとしてもかすかだった であろう声に, インターネットは世界のメガホンを提供するのである. また, 伝統的な片方向のマスメディアでは実現できなかったやり方で, 複数のものの 見方や対話を招き, 促進する. インターネットは民主主義の実現を, 予想しなかった方法で容易にできる. あなたは, インターネット上で株主の代理投票が現在では一般的に行われて いるのをご存じだっただろうか. おそらく, インターネットアクセスが 増加するに従って, 政治的な物も含む他の領域にも投票権を広げ, また 簡単にするような方法も見つけられるであろう. インターネットは, 我々が社会として成し遂げた全てのもののリポジトリと なりつつある. 組織化されていないヒューマンスピリットの "Boswell" の ようなものとなった. 電子メイル, ニューズグループ, その他のインターネット コミュニティでコミットすることには注意しよう. いつかウェブサーチ で出てくるかもしれないのである. インターネット上の共有リポジトリに オンラインアクセスできるので, インターネット上の共有データベースは研究の 発展のペースを加速している. インターネットは地球から離れつつあるのだ! 既に惑星間インターネットは, ジェット推進研究所において進んでいる NASA火星ミッションプログラムの 一部となっている. 2008 年までには, インターネットの惑星間システムの初期の バックボーンとして働く, きちんと機能する地球・火星ネットワークができて いるはずだ. InterPlaNet はインターネットのネットワークなのだ! 究極的には, 太陽の軌道の極における惑星間インターネットリレーができることだろう. したがってほとんどの惑星とその関連の惑星間ゲートウェイを, 常時かもしくは それに近い状態で見ることができるのである. インターネットソサイエティは, どこからでもインターネットにアクセスし, 利用することを促進するために新しいキャンペーンを始めた. キャンペーン スローガンは「インターネットはみんなのもの」であるが, この目的を達成する ためには多くの仕事が必要である. Cerf Informational [Page 2] RFC 3271 The Internet is for Everyone April 2002 インターネットはみんなのもの. しかし, そのサービスを使いたい人全てに 入手可能でなければみんなのものにはならない. だから, 我々は健康な 生活に必要な他のインフラと同程度にインターネットを利用可能なものに するために努めなければならない. ムーアの法則にしたがってインターネットを 可能にする装置の費用を削減しているが, 規制政策を刺激して費用を下げる ための競争の力を利用しよう. インターネットはみんなのもの. しかし, 政府がインターネットへの アクセスを制限していてはみんなのものにはならない. だから, ネットワークを 制限のない, 拘束のない, 規制のない状態にしておくために努めなければ ならない. 我々には意見を述べる自由と意見を聞く自由があるべきである. インターネットはみんなのもの. しかし, インターネットサービスへの 爆発的な需要に応えられなければみんなのものにはならない. だから, 我々は技術の発展と, インターネット革命の中心にある技術標準の発展に 努めなければならない. インターネット技術の発展に努めている, Internet Architecture Board, Internet Engineering Steering Group, Internet Research Task Force, Internet Engineering Task Force や他の組織のサポートに 努めよう. これらの組織は際限のない未来に我々を導いているのだ. さらに, Internet Corporation for Assigned Names and Numbers のサポート にも専心しよう. これはインターネットオペレーションの中心的な機能である. インターネットはみんなのもの. しかし, 全ての町のそして地球上の全ての 国の全ての家庭, 全てのビジネス, 全ての学校, 全ての図書館, 全ての病院で インターネットがいつでもいかなる言語でも制限なくアクセスできるように ならなくてはみんなのものにはならない. インターネットはみんなのもの. しかし, みんなが簡単に使えないほど 複雑であってはみんなのものにはならない. インターネットのインター フェイスを簡単にするタスクに努めよう. また, インターネットを使いたい 人全てに教育をしよう. インターネットはみんなのもの. しかし, 世界中の立法府が互換性のない 法律の藪を作り出し, Eコマースの成長を妨げたり, 知的所有権保護を 難しくしたり, 表現の自由や市場経済の発展を押さえつけたりしていては, みんなのものにはならない. グローバルな法律フレームワークを作り, インターネットが創造することの出来る価値の上向きのスパイラルを 促進するような国境を越えて法律が働くよう努めよう. Cerf Informational [Page 3] RFC 3271 The Internet is for Everyone April 2002 インターネットはみんなのもの. しかし, ユーザがネットワークで 行うトランザクションのプライバシーや秘密を守ることができなければ みんなのものにはならない. プライバシーを守るのに十分な暗号技術の問題に 取り組もう. 許可されていない人にプライバシーが晒されるのを防ぐのに十分な 暗号技術が自由に手に入り, 使え, 輸出できるように努力しよう. さらに, 確実性がネットワーク環境では信頼の中心になるので, インターネットを 通じた E コマースをサポートするための証明方法・システムの発展に向けて 努めよう. インターネットはみんなのもの. しかし, 親や教師が, 子供たちのために 守られたスペースを自発的に作り出さなければみんなのものにはならない. 子供たちにとってはインターネットの全範囲の内容はいまだ不適切なものかも しれないのだ. 技術と習慣を作り, これを提供することの責任を受け入れる 人々に防御する柔軟性を与えよう. インターネットはみんなのもの. しかし, その使用に責任を持ち, この富を共有する他の人の権利を忘れずにいなければみんなのものにはならない. この新しいメディアを責任を持って使おう. そして, インターネットが可能に してくれる自由と共に, 気を付けてまた考えてこのパワフルな道具を使うのに ふさわしい責任を提案しよう. こうした特権を悪用する人たちに対処するため, 悪用を排除して悪者に罰を与えるために必要なツールを開発しよう. インターネットはみんなのもの - 火星人だって! すべての場所のインターネットユーザが, インターネットソサイエティや その他の同様の目的を持った組織に入り, この, 言うは易く行うは 難いゴールの実現してほしいと願っている. 3番目のミレニアムの始まり というマイルストーンを過ぎるところであるが, インターネットを この新しいミレニアムのメディアとすることよりもよいテーマを, 我々は 掲げることができるだろうか? インターネットはみんなのもの「である」が, 「我々が」努力しなければ みんなのものにはならないのだ. 2. セキュリティに関する考察 本文書では, 秘密とプライバシーを守るための暗号化テクニックの利用に 関しての参照以外はセキュリティに関することは扱っていない. Cerf Informational [Page 4] RFC 3271 The Internet is for Everyone April 2002 3. 参考文献 [1] Internet Society - www.isoc.org [2] Internet Engineering Task Force - www.ietf.org [3] Internet Corporation for Assigned Names and Numbers - www.ICANN.org [4] Cerf's slides: www.wcom.com/cerfsup [5] Interplanetary Internet - www.ipnsig.org [6] Internet history - livinginternet.com 4. 著者の連絡先 Vint Cerf former Chairman and President, Internet Society January 2002 Sr. Vice President, Internet Architecture and Technology WorldCom 22001 Loudoun County Parkway, F2-4115 Ashburn, VA 20147 EMail: vinton.g.cerf@wcom.com Cerf Informational [Page 5] RFC 3271 The Internet is for Everyone April 2002 5. 著作権表示全文 Copyright (C) The Internet Society (2002). All Rights Reserved. This document and translations of it may be copied and furnished to others, and derivative works that comment on or otherwise explain it or assist in its implementation may be prepared, copied, published and distributed, in whole or in part, without restriction of any kind, provided that the above copyright notice and this paragraph are included on all such copies and derivative works. However, this document itself may not be modified in any way, such as by removing the copyright notice or references to the Internet Society or other Internet organizations, except as needed for the purpose of developing Internet standards in which case the procedures for copyrights defined in the Internet Standards process must be followed, or as required to translate it into languages other than English. The limited permissions granted above are perpetual and will not be revoked by the Internet Society or its successors or assigns. 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